モノから情報へ (-価値大転換社会の到来)

早速、書籍を注文しました。届くのが待ち遠しいです。早く読みたいです。 http://ohnishi.livedoor.biz/archives/51346911.html

大西 宏氏のブログより転載
2012年08月29日 アップルが訴訟で勝った意味
  アップル対サムスンの特許をめぐる裁判はアップル完勝でした。アップルは1台あたりスマートフォンで30ドル、タブレットで40ドルのライセンス料で手を打とうとしたにもかかわらずサムスンが強気にでたことが裏目にでたことになります。  

陪審評決はアップルの主張する損害賠償の半分にも満たない損害賠償(10億5000万ドル=約826億円)でしたが、それでも史上最高の賠償額で、しかも最終的な賠償額は、判事による判決によって決まり、最高3倍まで膨れあがる可能性も残されています。販売差し止めをアップルはを8製品に絞って要求していますが、それは公聴会を経て結果がでるようです。

さてこの裁判は時代の大きな変化を象徴しているように感じます。サムスン対アップルは、大げさかもしれませんが、「モノづくりビジネスの勝者」&「モノづくりの時代の考え方」対「ITビジネスの勝者」&「情報創造の時代の考え方」が正面衝突した裁判だと見ればまた違った風に見えてくるのではないでしょうか。そして、「モノづくりの時代の考え方」が「情報創造の時代の考え方」に完敗したのです。アップルがこの訴訟の本質は「金銭や特許ではなく、価値観」だと述べていることも、従来の訴訟との違いを感じさせます。

特許侵害の争点になっていっるのは、「アイコンのデザイン」であったり、「スクロールの最後で跳ね返る」、「1本指でスロール、2本指でピンチ、ズーム」、「タップしてズーム」とか、モノづくりの価値感で見れば、本質的な機能ではなく、些細なほんの小さな特徴にすぎません。その程度で800億円を超える、これからの判決によってはその3倍にもなりえる賠償金を支払らわなければならないのです。

しかもその影響ですが、たとえ賠償金はサムスンにとって致命傷になる金額ではないにしても、また最新モデルの「ギャラクシシーS3」などは販売差し止めが求めわれていないので直接的な影響は小さいかもしれないとしても、まるで重しを架せられたように問題をひきずり、連鎖して広がってくる可能性が高いように思います。サムスンにとって、またアンドロイドOSを提供しているグーグルにとってもそれは当てはまりそうだということです。アンドロイド勢でまともな利益を出しているのはサムスン1社だけで、他のメーカーでは訴訟に耐えないことも考えられます。いつ何時訴訟に持ち込まれるかわからない状態が続くのですから。

「モノづくりの世界」であれば、特許は、右から差し込むものを左から差し込むようにするなどの工夫で逃れることができる場合もあります。また問題は、特許に触れた箇所だけの範囲で収まります。

しかし「情報創造の世界」の場合は、ドミノ倒しのようにその影響範囲が広がっていく可能性が極めて高いのです。

例えば、「モノから情報へ-価値大転換社会の到来」で立命館の佐藤典司教授は分かりやすい例をだしています。佐藤教授は情報は組み合わせの仕方や関連付けで大きく意味が変わってしまう世界だとし、DOGとGODをあげていらっしゃいます。同じアルファベットを使っているにもかかわらず、順序が違うだけで意味が変わってしまうのです。同じように小さな要素の関連付けの違いでiPhoneになったり、Galaxyになります。今回のアップル対サムスンもこのことを想像すれば、もし特許訴訟でアルファベットの"O"が使えなくなると、DOGにもGODにもならなくなってしまうこともあり得るのです。堅い記号のDGとかGDになってしまいます。  

影響範囲ですが、すでにサムスンの敗北は株式市場に影響し、時価総額が120億ドル下落してしまいました。さらにブランドにまでおよんできます。基本OSであるアンドロイドそのもの、またアンドロイド連合軍にまで影響してくる可能性が否定できません。NTTドコモは日本に影響はないと呑気なコメントを出していますが、まあ悲観的な見方は出せない事情がそうさせるのでしょう。逆にそれだけ危機感があるとも読み取れます。

しかも、世界中でこの訴訟が起こっていて、長引きそうですが、長引いてもアップルは失うものがありませんが、サムス他のグーグル勢は結果がどうなるかわからないというリスクを抱えた状態が続きます。それはハンディとなってきます。

さて、「モノづくりの世界」のものの見方や価値観では、もともとアップルはなにも発明もイノベーションも起こしていないのです。電話できること、インターネットを利用できること、音楽をダウンロードできることなど、そのほとんどの機能は日本の携帯が実現していたことばかりです。いや、おサイフケータイ、ワンセグなど、機能は日本の携帯のほうが充実していたのです。しかしこの分野で日本は惨めなぐらい敗北してしまいました。

しかもスマートフォンもすでにあった分野です。しかし、アップルは携帯市場を一変させたという現実は誰も否定できません。iPhoneが登場前のスマートフォンとその後のスマートフォンの違いを見れば、歴然としています。

Apple_Samsung1-380x271さて、時代は「モノの価値」が主役であった時代から、急速に「情報の価値」が主役の時代へと変化してきました。この変化はかなり昔から予兆されていたものです。情報革命、知価革命など言葉が飛び交っていました。

しかし実際にこの変化を体験してみると想像をはるかに超えた力をもった激流でした。ツイッターやフェイスブックなどのように人と人のつながり方まで変えています。そして働き方、求められる能力、所得の配分までをも変えてきました。また商品やサービスそのもの、それらを支える物流などの仕組み、商品やサービスの売り方、そして皮肉なことにモノづくりのあり方まで変えてきたのです。

そして、日本はその大きな時代の節目をとらえることに遅れてしまいました。それが日本の経済の長い停滞も大きな原因となっていると思っています。 残念なことにこの変化を見ようとしていないの人が多いのです。マスコミもそうです。今回のサムスンの完敗の評定についても、さすがにIT系のネットメディアは詳しく報道していましたが、日経ですら、さもサムスンよりはアップルのほうがダメージが大きかったというピント外れな特集を組んだりしていました。さすがに軌道修正してきていますが。

ところで、産業革命が起こったにもかかわらず、相変わらず、教育は儒教を学ぶことだ、そろばんだとし、またモノを運ぶのは帆船と牛車だ、鉄道は危ないからダメだ、モノは職人さんの腕で良し悪しが決まるといった考え方をする国があったらどうでしょう。

今私達が体験している時代変化がなにか、立命館大学の佐藤典司教授は価値そのものが大転換した時代が来ている、それは企業も、人の生き方も変えてきており、それを正しくとらえることがまずは重要だとされていますが、逆にこの変化を直視しなければ出口なしの迷路にさまよい込んでしまいかねません。

これまでも、情報革命の時代を予兆した書籍は数多くありましたが、佐藤教授の「モノから情報へ-価値大転換社会の到来」が異なるのは、すでの起こっている価値大転換を読み解き、その原理がなにであるのかを整理することを試みていることです。きっとそこに働いている原理を見つければ、明日を見いだすことも可能になってきます。

日本は、モノの時代、工業化の時代の波に過剰適応してしまいました。だから抜け出すのに時間がかかっています。大事なことは、この時代変化について、それぞれの人が整理してなにが変わったのかを考えることではないかと感じます。ちきりんさんではありませんが、自らの頭で考えることが、この変化をチャンスに置き換えるためには必要なのだと思います。

「モノから情報へ-価値大転換社会の到来」はタイトルがセンセーショナルではないのでいかにも地味そうですが、しかし書かれている内容はそうではありません。ぜひ読んでいただきたい一冊がです。 特に教育に携わっている人はこの時代変化を理解して欲しいのです。情報が価値となる時代は創造の時代であり、工業化の時代のように横並びで、効率良くものごとをこなせればいいという時代ではありません。「どう作るか」の能力から「何を作るか」の能力が求められているのですから。それは知識をいくら詰め込んでも生まれてくるものではないのです。

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